【産業動向レポート】_2021年9月
- 2021.11.10
- 産業動向レポート
本レポートは、CCCマーケティング株式会社がT会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。
個食かシェアか
新型コロナウイルス感染者数は全国で急減し、流動は拡大基調にあります。食マーケットでは厳しい状況が続いた外食からは流動回復、利用時間帯の拡大に期待する声が大きくなっています。長く続いた時短営業の中、外食企業の多くはテイクアウト強化、デリバリー対応を拡大し、“中食化”を進めてきました。
中食市場は百貨店、スーパー、コンビニエンスストアと価格も異なる業態がひしめき、シェアの奪い合いを続けてきましたが、近年は全時間帯で幅広い商品提供を行っているコンビニエンスストアのシェア拡大が目立っていました。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大がオフィスでのデスクフード需要を奪い、売り上げが急減、コンビニエンスストアの惣菜・弁当は一転して厳しい状況に追い込まれました。百貨店は利用客数の減少がデパ地下にも影響し、テナントも退店に追い込まれ、コロナ前とは異なる売り方、陣容となっています。家ナカ需要の増大により好調に推移しているスーパーマーケットは、内食需要の拡大が足下の中食需要を侵食し、近年、注力されてきた惣菜は売上が伸び悩む状況が続いてきました。
コロナ禍による中食需要の転換は各業態の動きを活発化させ、アプローチにも変化の兆しが見えてきています。ここ数年、マーケットの主役だったコンビニエンスストアでは個食対応が基本でしたが、コロナ禍でワンストップショッピングが拡大していることを受け、もう一品の買い増し、ストックにも対応する商品のラインナップが強化されています。また、主食系のアイテムも買い足し需要に対応する小ポーションの商品が増強されて、新たな需要獲得に成功しています。
中食市場へのアプローチを強化している外食では、居酒屋などを筆頭にシェアを前提とした商品が中心となっており、コンビニエンスストアとの差別化という点では機能していますが、一方で個食型の対応に遅れている面もあり、このコロナ禍に弁当型・個食型の商品投下が加速しました。シェアメニューも個食メニューもあるということでコンビニエンスストアとは異なる形で幅広い客層への対応が図られていますが、コンビニエンスストアやスーパーとは異なり、来店してからのオーダースタイルが利用者サイドには不便な面もあり、利用促進のため、事前予約などの対応も同時に進められています。
内食需要の拡大で好調なスーパーマーケットはこの間、中食の需要変化に対応するアクションはやや遅れていましたが、一部のチェーンがコンビニエンスストアの転換を見ながら、小ポーションメニューを投下する動きを見せ、また、他チェーンでは外食店のようなシェア対応に適したプレート販売などに取り組み始めるなど、新たな動きが出てきています。
生活者はあまりに長いコロナ禍の生活でやや内食疲れとも感じられる動きを見せています。感染者数が抑制されて今後は外食利用も急回復してくることが予想されますが、そうした動きの中で拡大を続けてきた中食市場については、生活者の利用変化に対応した商品構成がますます重要になってきそうです。
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