【産業動向レポート】_2021年5月

本レポートは、CCCマーケティング株式会社がT会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。

 

反転攻勢に向け、外食は内食越境へ

 外食店の厳しい状況が続いています。度重なる緊急事態宣言の発出やまん延防止等重点措置、そして酒類提供の禁止により、中でも居酒屋、パブなどは壊滅的な打撃を受けている状況です。外食店の経営は原価、人件費のコントロール力で決まると言われますが、長引く営業休止状態から外食チェーンの多くはパート・アルバイトを抱えることが困難な状況に陥り、営業再開後もオペレーション面の負荷から万全の営業体制を組むことが難しくなりそうです。

 都心部の大型店は賃料負担も大きく、居酒屋チェーンを中心にすでに撤退を決めている外食チェーンが増加傾向にありますが、一方で都心部の路面店は前年の緊急事態宣言発出の影響でコンビニエンスストア、カフェ等の撤退が相次ぎ、都心部店舗は多様な業態で店舗の再配置が進もうとしています。

 外食企業の多くで店舗数を減らす動きが加速する中、テイクアウトへの対応強化、デリバリーを活用した商圏の拡大・深耕など、この間に業績改善を目指す動きを続け、大幅な運営人員の削減や原価率低減により反転攻勢に向かおうとしている企業の動きが徐々に具体的になってきました。

 中食需要も期待できるフォーマットとして各社で出店が加速している唐揚げ専門業態では、イートインとテイクアウトを並立させた店舗スタイルが増加し、さらに他業態との複合化で差別化を図ろうという動きが出てきています。
うどん業態は外食店としては一定のニーズがあるものの、テイクアウトへの取り組みは他業態よりも後れ、コロナ禍で大きく売上を後退させたチェーンが大半です。そのような中で中食需要が見込める唐揚げを組み合わせることでテイクアウト需要を伸ばすことに成功した企業も出現しています。中食需要に強い外食メニューとしては、ほかにもとんかつやピザ、焼き鳥などがありますが、こうした中食需要型のメニューを既存の業態に組み合わせることで、弱かったテイクアウト対応を強化する動きは今後、さらに加速していくとみられます。

 また、自社の商品、素材を使って、中食ではなく内食に切り込んでいこうという動きも出てきました。繰り返される営業休止によって安定した調達が難しくなり原価上昇を招いている企業が多くありますが、厳しい現状を打開すべく、自社商品を店舗や宅配などを通じてダイレクトに家庭に販売し、既存メニューのテイクアウト対応とは異なるアプローチで経営効率改善を図るねらいです。食品スーパーやコンビニエンスストアのような食品販売とイートインを兼ね添えた新業態とも言える動きは、外食の新たな可能性を提示できるか大いに注目されます。

 外食店の多くは営業を維持できるかどうか厳しい状況に追い込まれていますが、この苦境を乗り越えようとする取り組みが一気に加速してきました。既存業態の弱みをいかに克服し、新たな販売機会をとらえるか。コロナ禍を乗り切る知恵のその先には、新たな成長フォーマットの誕生を予測させます。



産業天気予報

 

【お問合せ先】
CCCマーケティング総合研究所
担当:杉浦・斎藤
cccmk-souken@ccc.co.jp