【産業動向レポート】_2021年2月

  • 2021.06.06

本レポートは、CCCマーケティング株式会社がT会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。

 

危機が生む新たな業態・サービスの可能性

 
 
緊急事態宣言が再発出され、外食業界はさらに厳しい状況が続いています。営業時間の短縮は居酒屋・ビアホール・パブレストラン・バーの業績に直撃し、こうした業態の1次利用を受けて2次利用を取り込んでいたラーメン、カフェなどにも波及する形で外食業界全体に暗い影を落としていっています。また、店舗内の密を避ける傾向は利用変化にもつながっており、店舗のレイアウトも客数を間引く形に転換して営業しているケースが大半となってきているのが現状です。時間も客席数もかつての状況とは異なり、抑制した営業を迫られる状況が続き、不振を脱する手立てがなかなか見出せていない企業がほとんどと言える厳しい状況です。

 外食・中食・内食の綱引きにおいては、新型コロナウイルス感染症の拡大以降は内食の回復が鮮明となり、外食の後退が顕著になっています。中食は主たる販売チャネルであった百貨店やコンビニエンスストアの来店客数後退が影響し、伸び悩む傾向が色濃く出ているようです。中食マーケットの中心ともいえる存在だったコンビニエンスストアはポーションの見直し、容器スタイルの変化、メニューの改善など、ありとあらゆるアプローチで落ち込んだ売り上げを回復すべく動き、その効果は徐々にではありますが確実に表れてきているようです。内食とのつながりが色濃いスーパーマーケットは惣菜部門がやや取り残されている動きとなっていますが、販売スタイルの転換、販売ジャンルの見直しが進み、売り上げ伸長の兆しが見られる企業も出てきていて、今後の動きが注目されます。

こうした中、不振を極めている外食もデリバリー、テイクアウトの強化によって中食化の動きを加速させており、業績回復につながっている企業も出始めています。しかし、デリバリーサービスの導入は新たなコスト負担となっており、個人店・小規模店ではデリバリーサービスに踏み出せなかったところが少なくありません。このような状況を踏まえ、個人店・小規模店の複合化デリバリーサービスが開始され、新たな動きとなり利用者にも刺激を与えています。同じエリアに立地する飲食店がタッグを組み、同一配送とすることでコスト面の負担を軽減。利用者にとっては、様々な業態の多様なメニューを一度にオーダーすることが出来るため、デリバリー飲食の利用障壁となっていたメニューの幅の狭さを解消することにもつながっており、こうした新たな取り組みが定着していくか注目されます。デリバリー飲食における“フードコート化”、“横丁化”とも言えるこのような動きはまだ都心部における限定的な動きではありますが、地方都市でも飲食店が集中するエリアでは集客面の厳しい状況を乗り越える知恵として活用できる可能性も大いにあります。

 国内で外食業界が産業化されて約半世紀が経過しましたが、様々な知恵で業態拡張を続け、外食利用は日常の生活に定着してきました。かつてない危機的状況に追い込まれている外食業界ですが、危機を乗り越えるあらゆる工夫は新たな利用を引き出し、新たな業態の誕生につながるものとして大いに期待されます。



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