「ちょっと先の未来」 注目キーワードは「セルフケア」

2021年のデジタルネイティブ世代のウォッチレポートを皮切りに取り組みを進めてきたCCCマーケティング総合研究所と伊藤忠ファッションシステム(ifs)は共同で、2022年12月より新たに「SANSEI PROJECT(3プロジェクト)」を立ち上げました。
今回のコラムでは2022年12月15日に開催された「SANSEI PROJECT」に込めた想いと、キックオフイベントの模様をお届けさせていただきます。

【SANSEI PROJECTの想い】
「SANSEI PROJECT」とは、「世代・世間・世界」という3つの「世」の視点から生活者の消費行動の未来を考えるプロジェクトで、これからの社会や消費の動向を考え、「ちょっと先の未来の生活者」を捉えていくことを目的にしているものです。


生活者データの視点、20年間蓄積された世代論の視点、そして国内需要だけだと気づかない世界のトレンドを見出すために世界の視点をかけ合わせて、業界の垣根を超えた視点で課題を捉える新しいソリューションを提供していきます。

参加者の方からは「多様な視点があったので思考が深まった」というコメントをいただきました。課題解決に向けたプロセスをさまざまな企業が一緒になって共有・共感し、生活者を見ることを大切にしたプロジェクトにしていきたいと考えています。

そんなプロジェクトのキックオフとなる今回のイベントのテーマは「セルフケア」。セルフケアについて世代・世間・世界の3視点で情報や意見を出し合い、トークセッション形式でリアル会場にお集まりいただき開催しました。
そのイベントの様子をレポートします。なお日経クロストレンドの記事「23年のZ世代トレンドはどうなる? 新キーワードは「セルフケア」」もこちらの内容を取り上げていただいております。合わせて御覧ください。

【キックオフイベント レポート】
ifs デジタルネイティブ イベント セミナー セルフケア
「SANSEI PROJECT」のキックオフイベントが12月15日(金)にWITH HARAJYUKUで開催され、流通企業やサービス業、メーカーやメディアの方など総勢で約80名の方がご参加されました。キックオフイベントのテーマは『デジタルネイティブ世代のセルフケアに見るちょっと先の未来』。デジタルネイティブ世代の「セルフケア」に注目し、複合的な視点で分析・考察することで、今後の消費の流れを考えるヒントをお伝えするトークセッションが繰り広げられました。イベントレポートでは、その抜粋をお届けいたします。

デジタルネイティブ世代とは、1980年代終わり~2000年代初めに生まれた人たちと定義をされています。大きな特徴は以下のとおり。

時代背景:成長社会から成果社会の移行期に育つ
自他意識:まず受容されたい他者目線を強く意識
消費意識:捨てる資源の最大に活かせるモノ・コト選び
基本価値観:先行き不透明だからこそ状況最適化志向

中村:デジタルネイティブを捉えることで今・これからの時代の必須課題・ニーズが見えてきます。今回のテーマをなぜ「セルフケア」にしたのか?その理由は、ストレスフルな不安定社会をサバイブするため自分の心身ケアが必須の時代になっているからです。社会や組織も個人の時代。常に戦わないといけないと思っている人が多く、そのためにセルフケアが非常の重要になっています。

大山:デジタルネイティブの自由な時間であるゴールデンタイムは23時です(参考:時間と場所の調査)。実は社会人よりも忙しいんですね。志向性を見てみると、生活満足度が高い。自立意識も高く、趣味や好きなことを持ちたいという人が多いです。彼らが一番欲しい時間は「睡眠」、「趣味・自由時間・入浴」など。自分をケアする時間を取りたい人が多いことが分かります。まとめると、学校や自己研鑽、将来に向けた投資や趣味など非常に忙しい世代で、その中で癒しを求めていることが特徴です。
ストレス 睡眠 ケア 癒やし 人間失格
浅沼:私からは世界的な観点をご紹介したいと思います。WGSNというデザイン予測を発信している弊社のパートナー企業によると「ケアカルチャー」という言葉がずばり2024年のトレンドに出てきます。事件・周期・構造の3つで社会問題を考えていくと、レイチェル・カーソンの「沈黙の春」が出版されてから60年、「ベルリンの壁の崩壊」から約30年、「9.11」から約20年、コロナ発生から3年です。ケアの必要性が可視化されてきた、というのが今の状況です。そんな中でケアのニュアンスが変わってきている点に注目しています。これまでは自分自身へのケアだった考えが、今は地域や社会、地球までがケアの対象になってきています。

では、「ケアカルチャー」を求める人々とは、どういう人でしょうか。それは、
・心地よく住む場所を移動する人
・親しみをわくようなフィジカルを実感できる人
・穏やかさがあるもの、活気があるもの、雰囲気があるものを大切にする人
・癒やしの要素、リカバリー、多機能、アースカラー、触り心地のよいものなどを求める人
・仕事よりも健康、競争よりも共創、利益よりも地球を優先したい人
といったような人です。

大山:最近の購買と7年前の購買からも違いが見えてきます。男性の日用品購買では、「ムダ毛ケア」「パック」「口臭ケア」といったものが上がってきていて、自分をいたわり、他の人の目線も気にするような人であることが特徴です。他にもラベルレスの水の購買や、異世界系のコミック、「人間失格」の購買も上がってきています。

中村:ifsのアンケートでも「清潔感がある人でいたい」が最多だったので、この購買結果はすごく納得があります。

浅沼:「辛い状況」とケア意識をテーマにお話したいと思います。いま世界で見てもマイノリティの人たちの中での自殺や鬱が増えています。メンタルヘルスの落ち込みがすごい状況です。つまり、安定した生活基盤が無い人の不安が増殖しているということで、そこにおけるケアがとても重要になってきています。加えて、男性ジェンダーにも注目が集まってきています。男性は責任感を負わされている立場で、追いつめられる。呪縛から逃れられない、といったものです。
一方で、ケアが絶対に必要なことを分かってはいるものの、デジタルネイティブは、必要と言われれば言われるほど「嫌」という年代でもあります。アンチウェルネス、アンチケアも増えていて、実は喫煙率があがってきています。この年代には、正しさを押し付けるだけではなく、ユーモアが必要になってきています。

中村:まさしくサステナビリティ&インクルージョンですね。いろんなストレスに対応をしないといけない時代だと改めて気づきました。

 


_____________________________________________________

<お問合せ先>
CCCマーケティング総合研究所 
担当:深井・大山

CCCマーケティング総研 問合せ