新たな生活者意識を探るPART4
- 2022.04.12
- 生活者意識調査
「ジェンダー平等を実現しよう」は、SDGsの17項目の1つです。
SDGsへの取り組みが各所で強化されている昨今、学校やメディアでも 「ジェンダー平等を実現しよう」が取り上げられることが多くなりました。また、6月はプライド月間として世界中でLGBTQ+といった多種多様なセクシュアリティへの理解を広げる活動も展開されます。
誰もが平等に自分が望む生き方を選択できるようにしようという考え方は世界各地で様々な形で実現されています。今回の意識調査では、「女性向けの商品・サービス」あるいは「男性向けの商品・サービス」といった暗黙のうちに固定化している一部の商品やサービスの垣根を、生活者の皆さんがどの様に考えているのか、またどうなる事を期待しているのかを見ていきたいと思います。
アンケートはCCCマーケティング総研が、2022年2月4日(金)~6日(日)にかけて2,061人を対象に実施しました。この美容・健康に関する意識調査を元に、意識に焦点を当て確認していきましょう。
※本コラムは商品やサービスに対する性別の意識や利用状況、商品・サーニスに対するご意見を頂戴し、調査結果を公表することで、今の生活者の思いを理解いただくことを目的としています。本調査で、は回答者のみなさまに性別をお伺いしておりません。そのため本稿のグラフ図には、性別表記が無い事をあらかじめお知らせいたします。
『商品』や『サービス』のジェンダーレス化に前向きな肯定派は全体の約3割で否定派の倍
まず、商品やサービスが特定のジェンダーに提供されることに、どの様な想いでいるかを見ています。
全体では、ジェンダーレス化の肯定派が31%、中立派は55%、否定派は15%となり、肯定派が否定派の倍の状況であることが分かります。
また、年代別に見ると、中立派と肯定派の動向に違いが確認できます。
年代があがるについて、中立派が増加します。
言い換えると、若い年代ほど、ジェンダーレスへの肯定派が増えています。特に肯定派が6割を占める10代以下に向けた商品・サービスの展開を考える際にはジェンダーレスの視点が必要と言えそうです。
【図1】
特定ジェンダーのイメージが強いのは、「身だしなみ」や「より見栄えをよくする」商品・サービス
続いて、身体へのかかわり方を「治療」「身だしなみを整える」「より美しく・かっこよく」3つの目的別に 『商品』と『サービス』の視点で生活者が持つジェンダーイメージを確認していきます。
まず、目的毎に確認すると『商品』と『サービス』との間に大きな数字の乖離はない事がここではわかります。
しかし、目的別においては治療目的と、それ以外で生活者の意見が分かれているようです。
治療目的については、ジェンダーへのイメージがあると回答している層が4割ですが、「身だしなみを整える」 「より美しく・かっこよく」なる目的になると6割以上が特定のジェンダーに向けた商品・サービスの印象を持つと回答しています。
身体をマイナスの状態(不調な状態)から、回復される治療行為には、ジェンダーイメージを持つ層は限定的 ですが、よりらしさを表現する行為にはジェンダーを意識している事が伺えます。
ここからは、身だしなみや、より美しく/かっこよくなるためのサービスや商品を中心に見ていきたいと思います。
【図2】
ヘアケア関連はジェンダーレス化推進のリーディングカテゴリー
図3では、生活者の意向を見ていきたいと思います。
まず、目立つのは、どの項目においても、現状に満足している層が4割~5割存在している事がわかります。図1でも、ジェンダーレス市場への中立派が54%存在していたことを考えると現在の生活で、満足を得ている層が一定層いることも確認しておく必要があります。
次に、 “性別にかかわらず使えるとよい”と生活者が回答している項目の傾向を見ていきたいと思います。最初に見える傾向として、身だしなみを整えるサービスや商品はと約4割の生活者が性別にかかわらず使えるとよいと考えています。美容院/床屋、ヘアケア用品、ボディケア、基礎化粧品が該当するのではないでしょうか。
続いて、身体を健康に維持する若しくは回復させるための整体・マッサージ、ジム、ヨガ、サプリメントなども性別に関係なく使えるとよいと各項目3~4割の支持を得ています。
このような傾向を見ていると、身だしなみを整える>現状を維持し健康に保つ>より美しく・かっこよくするといった順で、ジェンダーレス化を推進する生活者の意向が読み取れそうです。
また、特筆すべき点として、サービス、商品ともにヘアーに関する項目が、最も“性別にかかわらず使えるとよい”と生活者が回答しています。この背景から、今回は項目には入れていませんが、帽子やウイッグ・ヘアカラーといったヘアー関連商品は、同様の傾向が見える可能性もあるといえそうです。
【図3】
ジェンダーレスサービス利用は家族から、ジェンダーレス商品利用は友人から影響を受けている
続いて、自身のジェンダーと異なるサービス・商品の利用経験者に、どの様なきっかけで利用に至ったのか、自身の判断以外の理由を見ていきたいと思います。サービスに関しては、家族の影響が強く見えます。特に、整形を除き、各項目とも利用者のうち2割~3割が家族と一緒に利用したことがサービス利用のきっかけだったと回答しています。
利用に至る前には、家族に勧められているアクションがあるはずです。家族から勧められ、一人で利用するひと、家族と一緒に利用するひとに分かれてくることでしょう。この様な状況からも、家族が経験した事で得られる情報の安心感や信頼感が、サービス利用の大きなきっかけになっている事が読み取れます。
次に、商品を見てみましょう。商品利用には、友人の影響が見えるようです。友人と一緒に商品を利用するというシーンは、生活上発生しにくいこともあり、友人に勧められての商品利用の傾向が見えます。
中でも身だしなみを整える商品に関しては友人の影響力が高く2割を超えています。
最後に、サービスと商品において、家族からの影響と、友人からの影響の傾向が見えましたが、この要因としては、価格影響もあると想定されます。商品よりもサービスが、より継続利用かつ1回あたりの価格が高いこともあり、おすすめや相談できる相手がより身近な人になっていると言えそうです。
【図4】
新しいジェンダーレスサービス/商品のトライアルは、「身体的同性と一緒に利用する」事を希望している
新しいトライアルは、いつでも勇気がいるものです。
自身のジェンダーと異なる商品やサービスを初めて利用する時は、緊張することもあるでしょう。
ここでは、自身の身体的な性別とは異なるサービス・商品の経験が無い生活者に、自身の単独利用以外で一緒に利用してみたいひとは誰なのかを聞いています。サービス・商品そして、各項目共に“自身の身体的な性別と同性の友人・家族”との利用が高くなっています。同性であることで、サービス利用時には同じ場所で体験が出来る事などが、初心者には安心感を与えているのかもしれません。
また、商品も、購入に至るまでに相談・判断といったシーンにおいて同性のアドバイスを必要としている事が想定されます。
【図5】
今回は、身体に関わる商品やサービスのジェンダーレス利用の状況と意向を見てきました。
肌や爪、ヘアーなど我々の身体は、性別とは関係なくひとが一生つきあっていくものです。
また、それぞれに悩みが存在し、解決したい思いや、美しさを求める気持ち、よりよく見せようとする想いに性別は関係ありません。その気持ちを認め合い、多くの人が自身にあったここちよい解決手段や選択肢を得られる世の中が、商品やサービスからみた 「ジェンダー平等を実現しよう」の一歩なのではないでしょうか。
【調査設計】
調査地域 :全国
調査対象者:男女16~79歳
サンプル数:2,064サンプル
調査期間 :2022年2月4日(金)~2月6日(日)
日本の年代ごとの人口構成比に合わせて補正しております
本調査の集計表を販売しております。
詳しくは、下記をご確認の上、お問い合わせください。
【調査内容】
質問数:全15問
内容:商品に関するジェンダー意識設問
・生活の中での性別による不平等・不公平
・サービス/商品についての性別印象
・サービス/商品についての印象
・サービス/商品の分離意向
・サービス/商品について利用状況・利用サービス・同行利用者
・ジェンダーレスサービス/商品の認知経路・利用要因・利用理由
・ジェンダーレス市場への意向
・ジェンダーレス市場拡大後の利用意向・同行利用者
・ジェンダーレスサービス/商品利用時の障害
【集計内容】
・単純集計
・年代別クロス集計
【注意事項】
・クロス集計において、集計対象数が極端に少なくなる質問は出力していません。
【商品名/番号】
品名:「商品に関するジェンダー意識調査」(2022年2月)
番号:21-022-02
【価格】集計一式:12,000円(税別)
【お問合せ先】
CCCマーケティング総合研究所
担当:杉浦・斎藤
cccmk-souken@ccc.co.jp